ファッション豆知識 #7

馬に乗って狩猟、あるいは旅行することを主目的に考案されたジャケットは、長い間、男の着る服と見做されていました。ジャケットの目的は、乗馬での長期旅行を想定して、寒さや雨風、砂を防ぐ事、長期間着られる耐久性、訪問相手や道中で世話になる人に失礼でない見かけ、つまりフォーマルイメージの体現などでした。
そのために

  • 丈夫で毎日着られる耐久性のあるしっかりした仕立て【ティラード仕立て】
  • 乗馬時に必要なものを身近に置くためのアウターポケット
  • 雨で内容物(弾薬や干し肉など)が濡れないための雨蓋
  • 由緒正しくフォーマルな印象を相手に与える【襟】があること

が条件で、これは、道中で山賊やならず者と間違われないためにも必要でした。

また逆に内ポケットは付けていなかったと言われています。理由は、治安が悪い地域を旅行する際に、内側に武器を隠し持っていないことを表明しないと 襲われるリスクが高かったこと、ぴったりしたジャケットの内側に、財布や固いものを挟み込むと、窮屈であるとともに、馬の上下運動で内容物が暴れることを嫌ったこと、また落馬した際には、怪我のもとになること、スマートに見えないことなどが理由でした。

その後、治安がよくなり乗馬から開放された生活が送れるようになると、ジャケットは洗練の度を高めます。また薄手で滑りの良い裏地【スレーキと呼ばれました】が開発されたため、仕立て屋は高級を追及するため専用の裏地を薦めるようになり、その際に、表地と裏地の間に、あくまでも目立たないデザインで内ポケット(当時は隠しポケットとも呼ばれました)を進め腕のよさをアピールしました。当時、ポケットに入れるものといえば、身体に当たる違和感が嫌われたため、固く重いものは入れず、ハンカチなどの布や紙を入れたと思われます。(硬貨などは、別にチェンジ・ポケットがありました)