ファッション豆知識 #1

袖は通常、腕の形状に合わせて先細になっています。
その理由は、袖の太さが同じだと手の近くは余裕がありすぎて邪魔になる、汚れやすい、腕を上げた際に袖がずり落ちる、また冬場には太い袖口から風が吹き込んで寒い、エレガントに見えない、などが考えられます。

一方で先細になっている袖では、腕にぴったりの形状でテーパーをかけると、腕より大きな手が通らなくなる問題が生じます。そのため、もっとも細い袖口の部分を開閉可能にするしくみが必要となり、ボタンやベルト、ひも、こはぜ(足袋のうしろにある留め具、古い書物や巻物を留める細工にも見られる)などが生み出されました。なかでもジャケットでは、利便性の高いボタンが一般的に使用されるようになっていきました。

現在の袖ボタンはそのなごりで、実際に開閉はできません。ボタンホールかがりをした上にボタンを付けたもの、あるいはさらに簡略化してボタンのみを縫い付けた飾りボタンが大半となっています。

ジャケットに袖ボタンがある理由は

ティラードジャケットの袖ボタンの数は、そのような出自から、1つから5つ程度が一般的になっています。
開閉に必要で、なおかつボタン間が割れない(開かない)数として、2つまたは3つが通常ですが、特に決まりがあるわけではありません。中にはボタンそのものをデザインアクセントとして、前腕全体にわたってきらびやかに飾り付けたものも見られます。

なお英国の学校制服の場合では、袖ボタンがついていないのが普通です。これは、授業中にボタンが机に触れて音を立てたり、突起に引っ掛かってノートがめくり上がることを防ぐためです。また学生は勉学途上の半人前であることから、一人前の大人の服とハンディをつけるために、今では付ける必然性のない袖ボタンを敢えて省き、簡略仕立てにしているともいわれています。

ボタンの数

自軍の兵隊が厳寒の山中を越える際、鼻水を拭いて袖がテカテカになり、パレードがみすぼらしくなるため、拭けないようにボタンをつけたという逸話がありますが、真偽のほどは定かではありません。
ただ、侵略する国に対し自軍を雄々しく華麗に演出し、戦意喪失を狙うのは、戦場の常といえます。自軍をより立派に見せるために配慮したとしても、納得のできる話です。