【学校取材】大阪府立北野高等学校|生徒主体で考える制服リニューアルとは◆事例2

先生向け

トンボでは定期的に学校様へ制服リニューアルに関する取材を実施し、制服を通して学校の未来を見つめる先生・生徒向け情報誌「SCHOOLER REPORT View 」(スクーラーレポートビュー)を定期発刊しています。

今回はそのスクーラーレポートビューから、2024年に取材させていただいた大阪府立北野高等学校様の生徒を主体とした学校制服のリニューアルについてご紹介いたします。

|大阪府大阪市

大阪府立北野高等学校

1873年に大阪市東区(現在の中央区)難波御堂に開校した欧学校が起源。1902年に北区北野芝田町に移転して大阪府立北野中学校となる。現在の淀川区新北野に移転後、学制改革によって大阪府立北野高等学校へ。府内トップの進学校として知られ、生徒の自主性を重んじる校風を持つ同学で、生徒が主体となって推進した制服リニューアルについて取材しました。

※本記事は2024年11月にトンボが発刊した、制服を通して学校の未来を見つめる先生・生徒向け情報誌「SCHOOLER REPORT View Vol.02」に含まれる学校取材をWEB版としてアーカイブ掲載したものであり、掲載内容は2024年当時の内容です。

校長の視点|「自主性を育む」自由闊達な校風のもと生徒が主体となって制服をリニューアル

校長 浅田 充彦 先生

制服リニューアルのきっかけは、LGBTQの当事者である生徒から「制服変更の意見書」が提出されたことでした。2021年のことです。

学校としてはすぐに対応するべきだと考えて、秘密裏に「制服検討委員会」を結成。

リニューアルは生徒主体で推し進められ、2024年から新しい制服の着用が始まっています。

制服検討活動には教員も関わりましたが、基本的には生徒が自主的に課題を見つけ、解決策を提案し、より良い制服の姿を模索していきました。

こうした活動は本校の教育方針そのものであり、生徒たちは深く真摯にこの課題と向き合っていました。

気品のある制服は北野高校らしく、課外活動においてもふさわしい装いに。

リニューアル前の制服は伝統もあり、男子生徒が詰襟制服、女子生徒が紺色のブレザーでした。新制服は濃紺のシンプルなブレザー型で、ボトムスは同系色をベースとしたさりげないチェック柄になっています。

全体的に統一感があり、生徒の洗練された雰囲気が引き立つ、上品な制服です。

校章の「六稜」マーク

この制服に伝統を感じさせてくれるのは、胸元のバッジにあしらわれた校章「六稜りくりょう」マークです。

これは北野中学校時代の「中」の文字に由来しており、古くから親しまれてきたマークなんですよ。

そのほかのアイテムであるネクタイ、リボン、スカート、スラック、ベストなどは自由に選んで楽しめるようにしています。

(浅田校長)は青いストライプのネクタイを気に入っていて、自分でも欲しいなと思っているくらいで。

実はリニューアル後の制服は、在校生や職員も購入できるんです。それも本校らしさかもしれませんね。

本校ではLBGTQへの悩みがきっかけとなった制服リニューアルでしたが、ジェンダーレス対応はあくまで要素のひとつに過ぎず、基本方針は「全員が着やすい制服」と定めているためなんです。この方針も生徒たちが考えました。

制服は学校ブランディングに影響します。課外活動も盛んで、大会やコンクールなど生徒が人前に立つ場面が多い本校において、制服はなおさら重要な要素です。

そのほか、国際交流活動にも力を入れていますので英国発祥のブレザーで良かったと感じる場面もありますね。

新しい制服はそのまま社会に出ても問題ないと思うほど、しっかりとした印象を与えてくれます。

“学生”としてではなく“一個人”としてフラットに接していただけることは生徒の成長にもつながるでしょう。

今後、新しい制服が生徒たちの活動を支える存在となっていくことに期待しています。

大阪府立北野高等学校の制服デザイン

リニューアルされた北野高等学校の制服。

生徒のことを第一に考えて踏み切った制服リニューアル|生徒指導部の視点

生徒指導部/制服検討委員会 主任
川副 先生

LGBTQの方が一定数いることは知識として持っていたものの、今回の「制服変更の意見書」をきっかけに生徒の中にも悩んでいる当事者がいることに気付かされました。

気づいたからにはリニューアルをしないという選択肢はありません。

ですが、本校は伝統校として周囲からいただく期待もあり、既存の制服をどこまで変えるかは慎重に議論を重ねました。

とはいえ、衣類によって学校が生徒にとってつらい環境になってはいけません。

「制服検討委員会」発足後は本格的に制服リニューアルにへ動き出し、まずは生徒たちの意見を集約するために生徒会へ協力を仰ぎました。

そうすると、彼らがみんなの意見と真摯に向き合っているのがわかったんです。

その姿をみて「委員会へ参加しないか?」と声をかけたのが、生徒主導での制服リニューアルとなった背景となります。

最終判断には教員が関わりましたが、コンセプトやデザイン・機能面の検討については彼らを信頼していたので任せていました。

制服リニューアルを進めた生徒(当時)。着用しているのはリニューアル前の制服。

LGBTQの当事者だけでなく、北の高校の「全員が着やすい制服」というコンセプトを立てたのも彼らです。

例えば「女子生徒用のスラックスをつくる」のではなく、ジャケットやスラックスに性別で差をつけず「同一の型で2サイズ展開」にする、サイズ表記は「Ⅰ型・Ⅱ型」とするなど、その対応は細やかでしたね。

意見書を出してくれた生徒は卒業が近かったため、リニューアルには間に合わなかったのですが、「制服が持つ課題にしっかりと向き合う」という約束を果たすことができて本当に良かったと感じています。

さまざまな角度から制服を見つめることで、できる限り生徒が過ごしやすい学校環境に近付いたんじゃないかと思います。

2024年の新入生から新しい制服の着用が始まりましたが、良い意味でまるで別の学校みたいで…新しい制服が、学校生活をより楽しいものにすることができれば、教員として喜ばしい限りです。

SCHOOLER REPORT View

トンボでは、今回ご紹介した大阪府立北野高校様の制服リニューアルに関する学校取材はもちろん、トレンドや社会状況に合わせた【最新の気になる】制服事情が掲載された情報冊子を先生向けにご用意しています。

興味が出てきた」「もう少し詳しく知りたい」

ということがありましたらぜひお問い合わせフォームからお知らせください。

※冊子のお渡しは学校様に限定させていただきます

※本記事は2024年にトンボが発刊した、制服を通して学校の未来を見つめる先生・生徒向け情報誌「SCHOOLER REPORT View Vol.02」に含まれる学校取材をWEB版としてアーカイブ掲載したものであり、掲載内容は2024年当時の内容です。

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