毎年トンボ学生服には「ジェンダーレス制服」についてのお問い合わせを数多くいただいております。
そこで、毎年多く寄せられる「ジェンダーレス制服」についての質問より、制服メーカーの視点から現在の変化と、私たちが大切にしている「本当の配慮」についてご紹介いたします。
探求学習のテーマを「LGBTQ」や「制服の多様性」にしている生徒の皆さん、そして指導にあたられる先生方へも参考になると思いますので、ぜひご覧ください!
Q1. ジェンダーレス制服の需要は、実際に高まっているのでしょうか?
A. はい、ここ数年で劇的な変化が起きています。
トンボがジェンダーレスをテーマにした開発を本格化させたのは2015年頃からです。きっかけは、文部科学省から「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめこまやかな対応の実施等について」というパンフレットが出されたことでした。
特にここ3、4年で「多様性に対応する制服」への関心は全国的に急増しており、モデルチェンジを検討する学校の9割以上が「多様性への配慮」を要望事項に入れています。
| 年度 | モデルチェンジ校(全国) |
| 2021年度 | 234校 |
| 2022年度 | 432校 |
| 2023年度 | 747校(過去最多) |
| 2024年度 | 735校 |
| 2025年度 | 722校 |
(※日本毛織株式会社調べ)
Q2. 「女子用スラックス」を採用する学校が増えていると聞きましたが実際どうですか?

A. 現在では累計で3,000校を超え、もはや「特別なもの」ではなくなりつつあります。
トンボの納品実績を見ても、2014年には255校だった女子スラックス採用校は、2023年には2,000校強、2026年には、3,000校以上の学校で採用 へと急増しました。
ただし、ここで知っておいてほしいのは、スラックスを履く理由が「性の悩み」だけではないということです。生徒さんの中には防寒対策、自転車通学のしやすさ、動きやすさといった利便性で選んでいる方もいます。
「スラックス=トランスジェンダー」という色眼鏡で見られないよう、入学説明会などで「防寒や活動のため」と自然に告知する学校が増えています。
Q3. メーカーとして、デザイン面で工夫しているポイントは?

A. 特定の誰かのためではなく、「考え方」を形にしています。
「ジェンダーレス制服」という特定の商品があるわけではありません。私たちは以下の3点を軸に提案しています。
- 選択肢を増やす: 「男子はこれ、女子はこれ」と決めつけず、スラックスとスカート、ネクタイとリボンのようにアイテムを自由に選べるようにする。
- 性差を感じさせないデザイン: ブレザースタイルへの変更、など、パッと見の印象に差が出にくい工夫。
- 呼び方の工夫: 「男子用・女子用」ではなく「I型・II型」と呼ぶなど、言葉の面でも配慮する。
【なぜ、ブレザーは性差を感じにくいの?】
「詰襟学生服」「セーラー服」では、色や形で見た目に大きく差があります。ですが、ブレザーであれば、スラックスとスカートを同じ柄にすることができ、またスカート、スラックスどちらの組み合わせでも違和感なく着ることができます。
Q4. ジェンダーレスを考えると、男女同じ制服にしてしまえばいいんじゃないですか?

A. 男女同じにしてしまうと、どちらにも中途半端な着心地になってしまいます。
男性と女性の間では、小学生の間ではそこまで体型差がありませんが、中学生になると身長、バストともに差が出始め、高校に入学する頃にハッキリと差がついてしまいます。
ユニセックスジャケットのように男女兼用にすると、男女どちらにも中途半端な着心地になってしまいます。
体型に合っていない服を着ることで、単に着心地が悪いだけでなく、身体に余計な負荷がかかってしまいます。

Q4. 課題や、あえて「注意していること」はありますか?

A. 「やりすぎない配慮」と「バランス」が最大の課題です。
トランスジェンダーの生徒(統計上は約0.5%と言われています)に注目するあまり、極端に個性を消したユニセックスなデザインに偏ってしまうのは危険だと考えています。
「かわいい制服、かっこいい制服を着たい」という残りの99.5%の生徒の憧れも大切にしなければなりません。また、あまりに「ジェンダーレス」を強調しすぎると、当事者の生徒にとっては「ありがた迷惑」や「強制カミングアウト(意図せず周囲に知られてしまうこと)」に繋がり、かえって着づらくなるという声もあります。
0.5%の悩みに寄り添いながら、同時に99.5%の『着たい』という気持ちも大切にする。100%全員が納得できるラインを探すのが私たちの仕事です。
そのため、「さりげなく配慮されていること」。これが、私たちが目指す理想のバランスです。
Q5. 男子生徒がスカートを履くケースについてはどう考えていますか?

A. 心理的なハードルは高いですが、対応できる準備は整っています。
女子のスラックスに比べ、男子のスカート着用はまだ「周囲の目」というハードルが高いのが現状です。不用意なカミングアウトに繋がらないよう慎重な運用が必要ですが、実際に着用を許可する学校は増えています。
アイテム的には学生用のスカートはプリーツスカートが一般的であり、ヒップが大きい方、小さい方でも無理なく履くことが可能なパターンで、男性体型の方でも問題なく着用いただけます。
一方、スラックスはヒップや太ももあたりなど体型によっては負荷がかかるところがあるため、設計パターンを研究しながら作成しています。
まとめ

制服の多様化は、LGBTQの生徒のためだけのものではありません。「今日は寒いからスラックス」「今日はリボンの気分だった」といったように、誰もがその日の自分に合わせて選べる環境づくりです。
5年後、10年後、社会はもっと多様になります。大切なのは、「まずは正しい知識を持ち、どうすれば全員が心地よく過ごせるか」を、先生と生徒が一緒に考えていくことではないでしょうか。
▽こちらもご参考ください。

